この時禱書には100葉以上のミニアチュールが挿入され、所々にベリー公の紋章と肖像が描かれている。複数の画家によって制作されていて、「キリストの逮捕」と「洗礼者聖ヨハネ」にはジャン・ル・ノワールの様式が見られるとされる。彼がベリー公のために働いた1372年から75年の間に描かれたらしい。
「ボンヌ･ド･リュクサンブールの詩篇集」の「キリストの逮捕」と比べると、人物はほっそりとし、物静かでやや神経質な姿に変わっている。このころル・ノワールはピュッセルの模倣から脱却し、「ナルボンヌの祭壇飾りの画家」の様式へと移っていったらしい。
この時禱書の制作はル・ノワールの死後中断、その後完成された。
世界美術大全集10　ゴシック2　1370年代

ジャン・ル・ノワール　キリストの逮捕
「ベリー公の小時禱書」より
1372〜75年頃　写本装飾　21.5×14.5cm
フランス　バリ　国立図書館